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3月14日
シンポジスト 運営の都合上、会場からの発言は質問用紙に限定し,パネルディスカッション形式で進めます 本シンポジウムの企画者の現状認識
専門家に問われていること
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報告 |
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初期齲蝕の診査と治療を支援する公衆衛生的なフッ化物理用法 今日,小児における齲蝕の蔓延はピークを越えたといわれている.特に齲蝕処置率の改善は明らかとなってきた.しかし,小児の齲蝕発生量そのものは欧米諸国に比べ3〜5倍と多く,国内での調査年度比較で成人期以降は一人平均齲蝕罹患経験歯=10と,ほとんど減少していない.高齢者を含めた齲蝕予防対策はまさにこれからと考える.2兆6千億円の歯科医療費,そのほとんどは治療,治療,さらに再治療のために費やされている.世界一の長寿国として広く知られているわが国で,歯科保健の面からは健康世界一を実現することになぜか躊躇してきた. 学校歯科健診におけるシャープな探針の使用が充填歯数を増加させているとの警告がある.一方で学校検診でシャープな探針はほとんど使用されていない.また,使用している歯科医ほど充填に控えめであるとの見解もある.しかし,探針使用のいかんにかかわらず,歯科医師の予防的管理方針やフッ化物の公衆衛生対策を背景にすることはなお重要と考える. 齲蝕の診断,管理を予防的に展開する上で,フッ化物の応用は最も強力なインパクトを与えてくれる.フッ化物利用を基本にした場合,今までの「早期発見・早期治療」を「発生予防と定期健診」に代え,健全歯列の育成を目指したより合理的な管理体系を確立することができる.わが国でもいくつかのモデル地区で,また進歩的な歯科医院において,それらの成果をみることができる.われわれが体験した小学校における疫学モデルでは,スクールベースフッ化物洗口法(4歳より),選択的シーラント(シャープな探針によって検出されたC0を対象),および定期健診(6か月)が組み合わされ,7年後,管理に参加した全学年の9割がカリエスフリーの永久歯列,5〜6年生でDMFT=0.1〜0.2にまで減少させることができた. フッ化物による齲蝕予防は,わが国でもようやく一般に認知されてきたように思われる.しかし,フッ化物歯面塗布法やフッ化物含有歯磨き剤,フッ化物洗口法などの局所応用法に限られ,それらの方法の普及にしても先進国の中では最も遅れた状況にある.また,個人に委ねられた応用法では落ちこぼれが多く,すべての人々が生涯にわたってフッ素の恩恵を受けることは到底できない.公衆衛生的な工夫,対策が必要である.家庭,学校,職場,地域,それぞれの場で住民,行政,歯科医療担当者が協力しあうことである.また,人々にとって,本来フッ素は水や食物の摂取に関わる生活環境物質として生涯にわたって適正化が図られるべきものである.このためには,地域上水道のフッ化物添加が最も適している. 以上わが国でとかく見逃されてきたフッ化物の公衆衛生学的応用法の意義を再検討し,「初期齲蝕の診査と治療」を合理的に進めるための方策について提言させていただく. 初期齲蝕の診査と治療--保存修復学の立場から考える 近代の齲蝕治療法は100年以上前にG. V. Blackによって確立された.当時の時代背景を勘案するなら,疾患の予防や歯質保存の理念の大切さを説き,齲蝕歯質の完全除去とその部分の形態と機能回復のための修復を軸とした彼の理論はまさにパーフェクトなものであり,それ以前の非科学的な歯科治療を理論体系化した彼の業績は大いに評価されるべきであろう.しかし科学の発展や生活の質の向上が進む中にあっても,ひたすら100年も前に確立された理論をもとにした対症療法をくり返し行ってきたこと,あるいはそのための医療制度を守り続けてきたことには問題があろう. 保存修復学ではつねにBlackの理念に基づき,歯質保存の重要性を説き続けてきたのは確かではあるが,一方では「臨床歯科医養成」の名のもとで技術教育を優先せざるをえず,齲蝕症の科学的背景の研究や教育について基礎歯学,臨床諸学科の間での調整ができないまま今日を迎えたのも事実である.また,そもそも現代の教育では,これまでのように「原理・原則」を教授し,それを応用させるのではなく,さまざまな事象を学生に与え,それらの事象を整理統合させ,その過程の中で真理を見い出させる力をつけさせることが重要であると考えられている.この教育概念をPOS(Problem Oriented System)教育とよぶ.保存修復学でもBlackの「窩洞原則」が接着性修復の長足の進歩や個人口腔衛生概念の向上などによって「原則」たる価値を失ったいま,このPOS教育を導入し,さらに基礎関連学科や他の臨床諸学科との連携,臨床の場への学生のEarly Exprosureなど,具体的な課題を解決することが求められている. 演者もこれら一連の保存修復の新しい教育,臨床のコンセプトづくりを進めているが,その中で齲蝕治療の基本的方針については,
とし,次に患者や患歯のもつ問題点を整理したうえ,これらの基本治療方針から最も適切と思われる方針を選択し,治療を進めることを提唱している.このように治療方針を立案し治療を進めていくためには,患者のカリエスリスクの把握,齲窩のより精細な診査を行うなど,診査・診断の意義がきわめて重要であることも強く主張している.諸氏のご意見,ご批判をいただければ幸甚である. 初期齲蝕の診査と治療--補綴治療の立場から 口腔内に20本の歯があれば咀嚼・嚥下・発音などの顎口腔機能は一応営めるとして「8020」運動がある.最新の歯科疾患実態調査結果によれば,現在の80歳で20本の歯をもっている方は国民のおよそ5%であり,今後25年経過しても現実には「8020」は実現しない.この点からみれば天然歯による「8020」は今後の努力目標値といえよう. したがって,現状で顎口腔機能を充足するためには,補綴治療によって「8020」を目指すことになるし,さらに現実を考えれば,それに先だって「6020」や「7020」を実現して,顎口腔機能が良好に営めるようにしていかなくてはならない. この観点に立つと,「**20」を果たし機能回復が得られる補綴治療を行うためには,患者の年齢・生活環境・口腔環境などを考えに入れつつ,補綴装置を支えることができる残存歯を得るように努めるとともに,補綴効果の上がる欠損歯列様式となるように,補綴前の歯科治療を進めていく必要がある. 具体的には遊離端欠損の発現を防止して,欠損形態としては中間欠損となるようにしたい.このためには歯列最後方の残存歯を常に保存するように努める必要がある.また,その歯が支台歯として機能するためには,補綴装置を支持・把持・維持できる良好な状態の歯周組織であることも要件となってくる.さらに,欠損部の顎堤は骨欠損の少ないことが望ましいことから,歯の欠損原因としては歯周疾患より齲蝕でありたい.この二点から,残存歯の歯周組織の健康維持がまず求められてこよう. 支台歯の歯周組織が健康であれば,歯冠崩壊が存在していても修復により咬合の回復の可能性がある.しかし,無髄歯には支台歯としての限界が存在する.それは歯根破折に代表される歯硬組織の破折崩壊の発生である.この現象はrigid supportが適用された小臼歯にみられることが多い.築造処置された小臼歯に,支台装置としてテレスコープクラウンなどのrigid supportの補綴処置がされて,大きな咬合力が加わるようになった症例に発生する危険性がある.このような補綴処置に付随した偶発事故を防止するためには,齲蝕リスクや患者の年齢,口腔内状況などを考慮して,抜髄に至る前の有髄歯による歯冠補綴の可能性を考慮に入れる必要があろう. 補綴装置の装着によって支台歯やその他の残存歯は,加齢とともに齲蝕罹患あるいは再罹患し,口腔内崩壊への危険がある.これに対しては,口腔内の自浄性のもととなる唾液流出方向を考慮に入れたオーラルケア,プラークコントロールそして補綴処置が必要となってくる. 上記の問題を中心にシンポジウムでは討論してみたい. |
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