3月20日 講演概要一覧-3
講師 講演概要

Dr. Kurihara

栗原 英見
広島大学教授(歯学部歯科保存第二教室)

1954年 千葉県に生まれる
1980年 広島大学歯学部卒業
1995年 広島大学歯学部教授(歯科保存学第二講座) 現在に至る

所属学会

日本歯周病学会、日本歯科保存学会、日本臨床歯内療法学会、歯科基礎医学会、日本細菌学会、国際歯周病学会(IAP)、国際歯科研究学会(IADR)、国際歯科研究学会日本部会(JADR)、日本人類遺伝学会、日本組織培養学会

これからの歯周治療と診査・診断
 --増大する環境因子の関わり--

歯周病は偏性嫌気性菌の感染によって惹起される宿主免疫応答の結果と考えられている。歯周病の診断は、歯周病の病型に関わる検査(Typeの診断)、歯周組織の破壊の程度に関わる検査(Stageの診断)、そして歯周局所の炎症の程度に関わる検査(Stateの診断)をもとに下される。

現在、一般的に行われている歯周病の検査は、StageとStateの診断のためのものであり、Typeの診断のための検査はほとんどない。

いずれの病型の歯周病であっても、歯周病を惹起している原因は歯周局所で繰り返される嫌気性菌の感染であるので、治療の基本はStageとStateの診断をもとに、局所の細菌叢を改善することである。しかし、早期に発症する歯周病、進行度の早い歯周病、難治性の歯周病では、宿主になんらかの防御機能の異常があると考えられ、宿主−寄生体相互作用という概念をもとにした診断ができなければ、長期の安定した歯周病の管理はできない。

宿主の防御機能の異常は遺伝的に拘束されたものだけではない。医療の高度化や社会構造の変化は、環境因子の影響の増大として捉えられ、これによって誘導される後天的な宿主防御機能の異常を増加させる結果を招いている。その端的な例が糖尿病である。とくに2型糖尿病と呼ばれるインシュリン非依存性の成人性の糖尿病が確実に増加している。また、ステロイド、免疫抑制剤の使用は新しいコンプロマイズドホストを増加させている。一方で抗生物質の多用は、多剤薬剤耐性の細菌による新しい感染症の増加に繋がっている。

宿主−寄生体相互作用という感染症の診断の概念は、遺伝的拘束を受けた特殊な患者においてのみ適応されるものではなく、環境因子の影響の増大から今後益々増加すると考えられる後天的な宿主防御機能の異常を伴う患者の歯周病診断に欠くことができない概念である。

Dr. Gunilla Bratthall

Gunilla Bratthall
マルメ大学助教授(歯学部歯周治療学教室)

Associate professor and acting head of Department of Periodontology, Malmo University, Sweden

スウェーデンにおける歯周病の診断と治療

歯周疾患の診断にはいくつかの異なる検査法がある。

歯周疾患では、患者が、症状を自覚しないために、早期診断が遅れることがある。しかしながら、歯肉炎や歯周炎の初期兆候を診断することが重要である。

プローブはやや原始的な器具ではあるが、X線写真では単に隣接部の骨破壊しか観察できないかため、現在もなお、最も重要な診査の器具である。手用のプローブは、圧力が制御できる規格化されたプローブと同等の再現性を有しているということが研究で示された。コンピュータに組み込めば、患者に対する情報提供にも有益なものとなる。さらに、プロービングによって進行中の疾患を示す出血や排膿を知ることができる。また根分岐部病変の検査には特別なプローブを用いることが推奨される。

X線写真はまた、歯周疾患の診断において辺縁歯槽骨のレベルを記録し、根分岐部病変を診査するために必要である。

歯周疾患においては水平に位置付けられた咬翼法X線撮影が最適である。再生療法が考慮される場合、この撮影法は歯槽骨内欠損の状態を最もよく描写することができる。

完璧な治療計画における歯周疾患の治療にはデンタルX線写真が必要である。断層X線写真は早期変化を探知できるが、スウェーデンでは日常的には使用されていない。しかしながら、デジタルX線写真は、スウェーデンのいくつかのクリニックで使用されており、患者に病状を説明することが、その一つの目的である。

微生物学的検査は、治療反応が減退している患者に使用される。細菌性の歯周炎には、抗生物質の使用が必要となることがある。このため、異なる種類の抗生物質への耐性パターンをテストするべきである。チェアサイドの微生物学的検査およびDNA法では抗生物質耐性パターンを検知することはできない。さらに、歯肉溝滲出液中の様々な酵素などの宿主要因は、疾患の活性を反映していると考えられている。最近ヨーロッパでは、唾液サンプルを用いた遺伝因子の検査が導入された。これらの検査は白人を母集団とする研究を基本としたもので、将来はさらに充実したものに発展すると思われる。

診断には通常、歯と支持構造に関連した要素が含まれるが、治療計画作成にはこれら以外の要素も関係してくる。治療計画作成には、歯列だけではなく、患者本人に関わる要素も考慮しなければならない。

講演では現在利用できる診査器具で得られる情報、および早期診断と的確な診断の重要性を明らかにする。

会場風景へ