調査趣旨 

 フッ化物の応用が、う蝕の発症予防およびう蝕の進行停止に大きな効果をもつことは、膨大な疫学研究によって実証されています。その公衆衛生的な応用における費用効果の高さも実証済みです。また臨床的にもフッ化物の利用なしにカリエス・ハイリスク患者のリスクをコントロールすることは容易ではありません。

 ところが、わが国の新聞、テレビなどの報道機関では、う蝕予防のためにフッ化物の有用性について論じ、応用法を広めることが、未だに一種タブーであるかのように扱われています。その背景には、重要な問題であるにもかかわらず歯科医学・医療専門家のコンセンサスが得られていないことが一因となっていると考えられます。また報道機関がフッ化物によるう蝕予防を取り上げる場合には、賛否両論があることを示すのが常です。その理由は、報道の度に声高な人々から厳しい批判が寄せられるのが通例だからだと報道関係者は述べています。賛成反対双方からの批判が同時に寄せられることも少なくないようです。

 そこでは、う蝕の発症を抑制するためのひとつの手段であるフッ化物の利用が、あたかも独立した目的であるかのように論争の中心に位置づけられることがしばしばあります。フッ素の危険性を主張する声もそれに対する反論も、歯科医療・医学の専門家の認識を公平に反映したものであるとは思われません。

 あたかもイデオロギー対立のような声高な賛成・反対の主張は、フッ化物についての冷静な評価をためらわせ、また報道関係者に不要な警戒感を抱かせ、その結果フッ化物についての正しい知識が国民に伝わらないという事態を招いています。この現状は、学校や地域でう蝕予防活動を展開する際の大きな障害になっているばかりでなく、診療の場面でも患者の理解を妨げる要因になっています。

 そこで、わが国の歯科医学・医療の専門家が、この問題についてどのような考えをもっているのか、大学、学会、専門の垣根を超えて歯科医療・医学専門家の方々のお考えと教育の実態を調査することにいたしました。これと並行して本会会員の認識についても把握することとしました。

 なお、この調査結果の詳細は、本会会誌に掲載いたします。また、本会主催第3回国際シンポジウム(2000年3月19日)のディスカッション資料とし、同時に、報道機関に概略を報告し、歯科医療・医学専門家の見解に関して理解を広める努力をいたします。