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SRPのArt&Science長谷ますみ流クリニカルメソッド

書評:藤野友子(歯科衛生士 てらだ歯科クリニック)

SRPのArt&Science―長谷ますみ流クリニカルメソッド
(著者;長谷ますみ 出版;デンタルダイヤモンド社 定価;5,250円 2011年8月出版)

この本は,著者が臨床経験26年,指導経験16年の中で築き,探求してきたSRPという技術を書籍というかたちで,わかりやすく伝えてくれるものです. ベーシック編,ミドル編,アドバンス編と三つのパートに別れていて,SRPの初心者はもちろん中級者,上級者までに対応した内容になっています. また,臨床で欠かせない超音波スケーラーについても,それぞれのパートの終わりに記されているので,ベーシックからアドバンスまで使いこなせるようになっています. 私たちが日頃,臨床で悩み,戸惑い,困っていることが細かいところまで拾い上げられ,的確に分かりやすく解説されていて,目からウロコで納得できることばかりです.文章での説明に加え写真も多く,まるで動画をみているように連続でスケーラーのエッジの動きがわかるので,本を見ながら,実際に模型とスケーラーを持ち練習ができます. SRPを今から始める方はもちろん,経験があっても手応えが今一つ感じられない方,悩んでいる方にはお薦めの本です.実際に私もこの“長谷ますみ流クリニカルメソッド”に出会い技術の成果を実感しSRPが楽しいと感じている一人です. また,技術本というだけではなく,“はじめ”と“おわりに”書かれている文章を読むと著者の歯科衛生士という職業に対する “情熱と愛情”が感じられる内容で,読み終えたあと「さあ,また,歯科衛生士 頑張ろう!」という気にさせてくれる本です.

長期メインテナンスに強い歯科医院の院長が説く患者と長くお付き合いできる歯科医院作りのノウハウ28

書評:沼澤秀之(沼澤デンタルクリニック)

患者さんと長くお付き合いできる歯科医院づくりのノウハウ28
(著者;河野正清 杉山精一 田中正大 斉藤健 川嶋剛 出版;クインテッセンス出版 定価;4,410円 2011年7月刊行)

私の医院は2年前ヘルスケア型診療に転換を始めました.当時は「やりたい!」「やらなきゃならない!!」って意気込みだけで突っ走り,ヘルスケア型診療に一番大切なスタッフを引きずりながら走っていました.ちょうどそんなとき,著者の方々と交流をもたせていただき,はやる気持ちを抑えてスタッフの成長を見ながらの転換に変更し,実現してきた背景があります.この度この本を読んでこの2年間にいただいた本当にありがたかったアドバイスが全部詰まった本であることに驚きました.しかも内容はスタッフの採用,教育,評価から医院に必要不可欠なミーティングなどにも触れた至れり尽くせりの内容です.
自分は当時先輩院長からのアドバイスに「それは医院の状況によってだいぶ違うのでは?」と腑に落ちないこともあったのですが,この本では自費中心の医院,団地の中の医院など五つの医院の院長先生の対談形式で書かれているので,医院の方針や状況によって様々な意見が読めて大変共感できます. ヘルスケア型診療には院長先生の「やるぞ,変えるぞ!!」という思いはもちろん必要ですがチーム医療である以上一人では何もできません,チームを作る本当のコツ,スタッフとの関わり方では今までなかった参考書になること間違いなしだと思います.従来型の診療体系に疑問を感じてらっしゃる方,今まさにヘルスケア型の診療を構築しようとしている方,すでに実践し始めているが,どこかうまくいかないと四苦八苦している方がいらっしゃれば,まず読んでみてはいかがでしょうか? 
自分ももう少し早くこんな本と出合いたかったと思う今日この頃です.

『食生活と体の退化』先住民の伝統食と近代食その体への驚くべき影響

書評:森田健太郎(久喜市開業)

食生活と身体の退化―先住民の伝統食と近代食その身体への驚くべき影響
(著者;Weston A. Price 訳;片山恒夫 出版;恒志会 増補・改訂版 定価;4,200円 2010年12月出版)

この本は,著者が,およそ10年間にわたり,「健康な人」を求めて,全世界14カ国,数百に及ぶ地域を訪れ,先住民の食習慣と口腔の実態についての調査を膨大な記録として残したものである.本書は,人類学としても非常に興味深い名著である. 本著の中にある200枚にものぼる記録写真の数々をみれば,砂糖や精白小麦などのいわゆる「近代食」が先住民たちにもたらした影響は,「むし歯」だけではなく,顎の変形を伴った「歯列の狭窄」に及んでいることが一目瞭然である. 子どもたちの健康で健やかな成長のためには,単に砂糖を断つということだけではなく,なるべく自然に近い日本に昔からある「伝統食」がいかに大切なのかがよくわかる. 私たち歯科医療従事者は,単にう蝕の予防という観点からだけではなく,歯列不正にも重きをおくことの重要性を感じる. 明日からの臨床において,食習慣改善を見直してもらう場面で,患者さんへ伝える言葉が、変わってくるような、そんな一冊である。

『では、予防の話をしようか』

書評:中川正男(大阪市開業)

『では、予防の話をしようか』
(著者;大野純一 出版;医師薬出版 定価;2,730円 2010年12月出版)

現在日本の予防歯科には色々の考え方がありますが、この本は我々が現在行っている予防について、北欧からもう一度問いかけているように思えます。 この書物に出てくるマーロウ先生や地名は、実際には存在しない北欧の架空の名称のようですが、留学生とのディスカッションを通じて、我々に北欧の予防の考え方が理解し易いように工夫されています。 また随所に素晴らしいイラストが挿入され、北欧の風習等も随所に紹介されており、読む者は実際に現地にいるような錯覚さえ覚え、予防の本質について迫ってきます。 Lesson1は健康と病気、そして検査と診断についてから、Lesson9のマーロウ先生のリスク論3に至るまで詳細に述べられており、予防を含め、歯科医療全般にわたり基本的な考え方が学べる本は今までなかったように思います。 またマーロウ先生が来院患者をクワドラントという分類法で、O(理想的な状態)A(許容範囲内の状態)P(問題のある状態)U(患者が不満に感じている状態)と思考を4通りに分類しています。 これは治療計画を考える上で、目に見えないものを実際に理解しやすい形に置き換える合理的で便利な分類方法です。 (来院患者クワドラント) 
OptimalAcceptable
Unsatisfied Problem
また分かりにくいリスクについても、本書は詳しく述べられており、普段疑問に感じている点について明快に答えてくれています。 読むにつれ、ともすれば予防と治療について線を引き、区別している我々の誤りに気付かされます。  また普通の事を普通に行うことがいかに大切か、ということも教えてくれます。 この本は我々が予防とは、また歯科臨床とは何かと迷っている時に、答えを見つけ出すヒントを与えてくれる格好の書ともいえます。 この本の利用方法ですが、多分1回読むだけでは理解できないとも思われます。 医院内におけるミーティング、勉強会の場において、ディスカッションを含めグループワークを行い理解を深めていくこと等、色々な利用方法が考えられます。 またこれが本書の目的とも思え、是非チャレンジしてほしいものです。 ともすれば目先の事にのみ視線がいく日本の歯科の現状において、本書はこれから健康を守り育てていこうとしている、志の高いヘルスケア会員諸氏には是非読んでいただきたい良書であると確信しています。

『未来型歯科医院をつくろう』

書評:雨宮博志(秦野市開業)

『未来型歯科医院をつくろう』
(編者;康本征史 著者;康本征史、武智宗則、築山雄次、清水裕之、渡辺 勝、竹歳さおり、阪口歩里、白石一則、濱田智恵子、小窪秀義 出版;医学情報社 定価;5,250円 2010年12月出版)

この本は2009年9月神戸で開催されたシンポジウムをまとめた本である。 従って内容は、非常に読みやすく、あたかもその会に出席しスライドや講演を直接聞いている感じになるから不思議である。 また、当会(日本ヘルスケア歯科研究会)・CHP・ウェルビーイングの三つ会の先生方が執筆しているのも興味が惹かれる。結局、歯科に対し同じ熱い想いを持っているのがよく理解できる。 さらにT・C(トリートメント・コーディネーター)について役割、心構えも詳しく記載されていて本職を志す方にも必携といえる。 表題にあるように予防型定期管理型歯科を未来型と変えたところに編著である康本さんの意図が読み取れる。1冊5000円ドクター用・スタッフ用と各医院に2冊あってもよいのでは?と思わせる内容である(特に今後認証を目指す医院や予防歯科を始めていく医院にはお勧めである) しかし、予防がしっかり定着していくと、どの医院でも手狭になってきて、拡張もしくは移転になっていくものらしい… 振り返って自院をみてみるとどうなのか? 自問自答させられる本である。

『顔・からだ バランスケア お口の健康を保つために』

書評:丸山和久(神戸市開業)

『顔・からだ バランスケア お口の健康を保つために』
(著者;筒井照子  出版;医歯薬出版 定価;2,940 円(税込) 2010年3月出版

口の中のトラブルや全身の諸症状の原 因を,安易に咬み合わせ・咬合に求める 風潮には疑問があります.ただ,からだ のバランスを保つ・回復することは大切 であり,そのために咬み合わせは大きな 要素です.そしてまた,咬み合わせを乱 す原因の一つに「態癖」があるのは間違 いないようです. 態癖とは,本書の著者筒井照子氏の造 語で「 杖やよくない睡眠姿勢のよう に,アゴに外から悪影響を及ぼす力を加 える生活習慣」のことです.最近では, 直接,歯列やアゴに力を及ぼす生活習慣 だけではなく,職業的に長時間無理な姿 勢をとることなど間接的なものを広義の 態癖と呼んでいるようです.このとこ ろ,歯科衛生士向けの雑誌でも特集が組 まれています.
著者の筒井氏は,矯正の専門医として 著名であり,ご主人は皆さんもご存知の 故筒井昌秀氏です.大作『包括歯科臨 床』(クインテッセンス出版)もお二人 のチーム医療から生まれたと承知しています. 本書ではまず顔の歪みに注目します.それを, 筋肉の非対称性・骨格の 非対称性・アゴの偏り・ 歯列弓の歪み・咬み合わせの偏りに分類 し,それらの原因となる態癖・不適切な 噛みかたなどについて多くの写真・図版 を用いてわかりやすく解説しています. 読んでいて「こういう患者さん,いるよ なあ」と必ず感じられると思います.実 際の治療となると奥深くなっていきそう ですが,定期的に患者さんと接する機会 の多い私たちにとって「引き出し」を増 やすのに絶好の書です. 先日のヘルスケアミーティングで矯正歯科医の井上裕子さんがおっしゃった「早期発見,正しい介入」を実践するためにも,まずスタッフ全員が本書を読まれてはいかがでしょうか.「DMFT は幸 いゼロなんだけど咬みあわせが...」という ケースをぜひ減らしていきたいものです.

『フッ化物についてよく知ろう う蝕予防の知識と実践』

書評:杉山精一(八千代市開業/コアメンバー)

『フッ化物についてよく知ろう う蝕予防の知識と実践』
(著者;飯島洋一 出版;デンタルダイヤモンド社 定価;5,670円(税込)2010年4月出版)

今までフッ化物についての本は数多く出版されていますが、この本の特徴は、第1章「フッ化物とリスク・コミュニケーション」に全体の半分にあたる53ページを使って詳細に解説している点です。 著者の前文には「科学物質の健康リスク評価には、パラダイムシフトと呼ばれているほどの変化が…(途中略)…今後は、専門家には知らせる義務を意識した説明を行い、同意を求める努力が求められる」とあります。私も、最近の社会情勢の変化は、まさにそのとおりだと思います。フッ化物と歯科界の接点となった1900年代の有害作用としての報告からスタートした歴史的経緯、フッ化物が食事摂取基準に組み入れられる可能性、フッ化物と有害事象の報告事例として「フッ化物と骨肉腫」の事例などについて根拠を示して詳しく解説しています。 診療室から外へ出て地域の協議会や保健関係者へむし歯予防について講演をするときには、必ずフッ化物について説明することになります。フッ化物の有害性についての質問を受けることがしばしばありますが、タイミング良くわかりやすく説明をすれば多くの方は納得していただけます。そのようなときのための資料として本書はとても役立ちます。
また、第2章では「フッ化物をう蝕予防効果」について基本的なことから特定保健食品でのう蝕予防についてまで幅広く解説されていて、診療室での患者さんへの説明にも役立ちますので歯科衛生士の方にもぜひ読んでいただきたいと思います。

『事例で学ぶ 禁煙治療のためのカウンセリングテクニック』

書評:杉山精一(八千代市開業/コアメンバー)

『事例で学ぶ 禁煙治療のためのカウンセリングテクニック』
(編集;田中英夫 著:谷口千枝 出版;看護の科学社 定価;2,100円(税込)2009年8月出版)

実際の臨床の場で禁煙支援を行うといろいろな事例に遭遇します。そのような時に役立つように具体的な事が書かれた本が欲しい、という要求を実現してくれたのがこの本です。例えば、第5章には、ポイントとなる言葉かけ問答集があります。「過去に何度も禁煙したが、失敗ばかりしている」「今までに禁煙経験がない」「家族みんな吸っている」「体重が増加して逆に身体に悪いんじゃない?」など様々な場面についてのカウンセリング例が書かれています。さらにケーススタディでは実際の症例を患者、カウンセラーのやりとり、そのときの観察とアセスメントプランについての考察も交えた、詳細なプロセスレコードを紹介しています。これらの臨床例だけでなく、禁煙治療に必須の基本的な行動科学と心理学についての解説もされています。一番最後には失敗例での考察、さらに患者、医師、看護師の間で使用できるクリニカルパスも示され、それらが付録のCDにも入っていますので、すぐに活用できそうです。

著者の谷口千枝さんは国立病院機構名古屋医療センターの禁煙外来の看護師で、その経験をもとにして書かれています。歯科での禁煙支援とはやや違う現場ですが、そこから私たちが教わることはたくさんあります。歯科医院での禁煙支援が重要ということはいうまでもないですが、実際に効果的に行って成果をあげている医院はまだまだ少ないのが現状です。そのような状況から一歩進めるためにこの本は大変活用できると思います。

『すぐに役立つ 歯育て支援Q&A お母さんたちから194の質問に答えて』

書評:高木景子(神戸市開業)

『すぐに役立つ 歯育て支援Q&A お母さんたちから194の質問に答えて』


(著者;井上裕子/田村康治/池田市歯科医師会/母親Q&A検討委員会 出版;クインテッセンス出版 定価;2,730円(税込))

自分で調べて考える過程が自分のためになるのです。わからないことの答をすぐに求めてはいけません… と、学生時代はさんざん言われ続けてきました。「そんなこといわずに答を教えてくれたらいいのに」と、不良学生だったわたしは幾度となく思ったものです。

歯科医師として20年余り、また院長として10年余りの間、「自分で調べて自分で考えなさい」という言葉を、たくさんの後輩やスタッフに言ってきました。しかし、聞いたことの答がズバッとわかるのも、いいことなのだと思えるようになってきました。答がわかった後、それをどう味付けしていくか、その方が実は大切なのかもしれません。

大阪府池田市の歯科保健事業の際に出た、子育て中のお母さんから歯科医師・歯科衛生士への質問をまとめたのがこの本です。出務歯科医師・出務歯科衛生士が、「できるだけ正しい情報をわかりやすい共通の言葉でお話しできるように」と、池田市歯科医師会が作成した回答集の小冊子が、本になって出版されたものです。

ほとんどがよく出会う定番の質問で、一問一答形式になっており、回答のポイントが記されています。質問の分野で分けてまとめてあるので、調べたい質問をすぐに見つけることができます。残念なことに、一つの質問に対する回答はごく簡単なもので、この答だけで納得する方はそれほど多くはないだろうと思われるほどあっさりとしたものです。この本の答がすべてととらえるのではなく、あなたの経験や知識を交え、患者さんの個々の状況を加味することで、より素晴らしい回答を作り上げることができます。自院オリジナル、あなたオリジナルの回答を作るためのガイドラインとして、ぜひ手元に置いておきたい一冊だと思います。

『子どもの不正咬合 一般歯科医に伝えたい考え方と早期発見のポイント39』

書評:近藤明徳(神戸市開業)

『子どもの不正咬合 一般歯科医に伝えたい考え方と早期発見のポイント39』

(著者;井上裕子 出版;クインテッセンス出版 定価;7,350円(税込))

定期健診に来てもらい、フッ化物洗口やシーラントをしていると12歳児永久歯カリエスフリーがほぼ達成できることは、新潟県弥彦小学校ですでに実証されています。(4歳からのフッ化物洗口&小学校でシーラントを実施することで平成9年に12歳児DMFT0, 13本)

子どもの場合う蝕が減ると、次の問題は不正咬合です。

「ずっと定期健診に来ていた子どもが5年生になり、カリエスフリーは達成したけど気が付けば不正咬合」という苦い経験をどなたもお持ちだと思います。ところが、いつ、どんな所に気をつければいいか知ろうと思っても、今まで、成長期の子どもの咬合育成についてわかりやすくまとめられた本がありませんでした。

また、患者や保護者に「指しゃぶりなど悪習癖の歯列咬合への影響」を説明するとき、言葉では上手く伝わらず、まどろっこしい思いを経験された方も多いと思いますが、やはり説明に使える良い本はありませんでした。

このたび出版された「子どもの不正咬合 一般歯科医に伝えたい考え方と早期発見のポイント39」(井上裕子著、クインテッセンス出版)は子どもの歯列・咬合育成がわかりやすく学べて、しかも、患者説明にも使える歯科医師、歯科衛生士必読の本です。内容は簡潔に7章39ポイントにまとめられています。

最初から最後まで随所に著者の豊富な知識と、子どもに対する暖かいまなざしがあふれています。もっと詳しく知りたい読者のために各項目内に参考図書を写真入りで紹介しているのも親切な企画です。もちろん、いま話題の姿勢、頬杖、口呼吸、筋機能訓練、乳歯反対咬合の早期治療、食生活についても述べられています。

39ポイントのほとんどが2ページの見開きで読みやすいうえ、80症例、400点の豊富なカラーの症例写真、矯正装置の写真があるため患者説明用としても使えます。「このケースと同じですよ」と症例写真を示しながら説明することは、患者、保護者の理解を正確にするでしょう。カルテに「子どもの不正咬合」何ページを説明と記載するだけで、開業歯科医にとっては誤解によるトラブル回避策にもなります。また、一般歯科医にとっては、どんな症例にどんな矯正装置を使ったかの症例写真は臨床のヒントにもなるでしょう。

待合室に1冊、診療室に1冊、スタッフルームに1冊、院長室に1冊あっても良い本です。ぜひご一読ください。

最後に、著者の井上裕子先生は研究会の会員で、講演も好評です。これからの活躍が期待されます。

『チェアーサイドの禁煙支援ガイドブック』

書評:高木景子(神戸市開業)

『チェアーサイドの禁煙支援ガイドブック』
(著者;渡辺 勝/長山和枝 出版;デンタルダイアモンド社 定価;2,940円(税込))



お口の健康を守っていくうえで禁煙はとても意味のあること。それはわかっているけれど、患者さんを「禁煙させる」のはむずかしい… たしかにそうだ。最初は誰もがそう感じるだろう。

禁煙は「教育」でも「指導」でもなく、「支援」である。「禁煙させる」のではなく、患者さんの「禁煙しよう」という気持ちをサポートし応援することだ。どうやってお手伝いしようか? そういう気持ちでわれわれが取り組めば、禁煙支援はむずかしさが激減し、楽しさがぐんと増すことになる。

歯科医院はじつは禁煙支援に最適な場所ではないかと思う。禁煙したい人もしたくない人も、禁煙できた人もできなかった人も、歯科医院には通い続けるのだから、アプローチもフォローも自由自在。禁煙できた患者さんからは感謝され、一緒に喜ぶことができる。残念ながら再喫煙してしまった患者さんとも、お付き合いは続き、はげまし、再チャレンジを勧めることもできる。こんなやりがいと楽しさにあふれた禁煙支援、やらない手はないはず。

では実際にどうするか? この本にはさまざまなヒントが書かれている。どこから手をつけたらいいかわからない人、やってみたけどうまく行かなかった人、それぞれのぶち当たった壁を乗り越えるためのヒントがあちこちにちりばめられている。禁煙支援、やってみたい! と思う人がまず手に取るのに最適の1冊だと、おすすめする。

『歯科衛生士臨床のためのQuint Study Club だれでもバッチリ撮れる!口腔内写真撮影』

書評:土屋紘美/まさき歯科医院・歯科衛生士

『歯科衛生士臨床のためのQuint Study Club だれでもバッチリ撮れる!口腔内写真撮影』
(監修;中野予防歯科研究会 著者;飯田しのぶ・山口志穂 出版;クインテッセンス出版 2008年6月 定価;3,360円(税込))

皆さんは口腔内写真をどのように活用していますか?
患者さんに今のお口の中の状態を説明するときや、術前術後を比べるときなど、口腔内写真はとても重要な資料ですよね。私たちは限られた時間の中でたくさんのことをしなくてはなりません。しかし、口腔内写真を撮るのは結構時間がかると思いませんか? また、せっかく撮ってもピントがあっていなかったり、見たいところが撮れていなかったり。上手く撮れないと、ただの時間のロスになってしまいます。そうなると、なかなか次も口腔内写真を撮ろうという気持ちにはなりませんよね。

この本には皆さんの苦手を解決する方法がたくさん書いてあります。
始めは、基本的な撮り方が部位別に詳しく書いてあります。術者の位置や患者さんの顔の向き、ミラーの挿入方法、口角こうの引き方などたくさんの写真と共に掲載されているので、これから口腔内写真を練習しようとしている新人歯科衛生士の皆さんにも最適だと思います。

また、きれいに口腔内写真をとろうとすると、撮ることに専念してしまって、患者さんのことを忘れがちになってしまっていませんか? いくらきれいな口腔内写真を撮っても、患者さんに不快な思いをさせてしまっては、台無しですね。この本には、口腔内写真を撮っている時に患者さんがどんなことを思って、感じているか、術者として患者さんへどのような心配りができるか。声のかけ方や、そのタイミングなども詳しく載っているところもとても良いと思いました。私はここで、改めて自分の口腔内写真の撮り方や、患者さんの気持ちを考え直してみることができました。その他にも、「何回練習しても失敗してしまう」という写真から自分の癖を知ることで、ステップアップできるような項目もあって、自分の苦手もすぐに解決することができます。

この本は、写真やイラストが多いので、あっという間に読むことができます。本を読むのが苦手な私でも楽しく読むことができました。そして、読み終えた時には自分の苦手も克服できて、これから口腔内写真を撮ることが楽しくなるはずです! 飯田さん、山口さんのたくさんの心配りがなされている本だと思いました。ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

『別冊歯科衛生士 う蝕・歯周病予防のためのリスクアセスメント&コントロール』

書評:渡辺 勝/春日部市開業

『別冊歯科衛生士 う蝕・歯周病予防のためのリスクアセスメント&コントロール』
(著者;景山正登 出版;クインテッセンス出版 2007年12月 定価;4,515円(税込))

リスク評価に関して、数多くの方法が開発され臨床応用されているが、その目的や手法について臨床家の視点で詳しく記された書籍は今まで存在しなかった。リスクコントロールに関しては、様々な考え方が主として経験的な視点で述べられてきたが、その根拠となるものと関連が示されている書籍は少なかった。今回、本書が発行されたことで、これらのことが明確になっている。

リスクコントロールの結果は時間がたたないと、その評価はむずかしい。そのために、長期にわたる患者の参画が絶対条件だが、これらのポイントについても、景山歯科医院ならではのポイントがちりばめられており、すぐに臨床応用しやすいつくりになっている。大学時代、組織学を専攻していた強みをいかした、臨床例と似通った顎骨の写真、そして「力」の観点からの考察も含まれているのもこの本の特徴と云えるだろう。長期にわたる臨床経過を記録として残してきた氏の豊富な症例と、そのバックグラウンドになる根拠についての解説も図やグラフを多用することで視覚的にもわかりやすく、解説も平易に書かれており、どんなレベルの人でも理解を深めることができる。

これからの時代を、歯を長持ちさせ快適で健康な口腔を維持させようと考える歯科医療者にはぜひとも読んでもらい、臨床の糧として頂きたい一冊である。

『むし歯って、みがけばとまるんだョ――削って詰めるなんてもったいない!』

書評:吉弘 幸/たかはし歯科

『むし歯って、みがけばとまるんだョ――削って詰めるなんてもったいない!』
(著者;岡田弥生 出版;梨の木舎 2008年2月 定価;1,575円(税込))

著者は、20年間、乳幼児の歯科健診に従事してこられ、その経験のなかから得たものがこの本の中に凝縮されています。内容はいろいろ興味深いものがあり、その中で私が考えさせられたことが三つありました。

一つ目は、「むし歯」についてです。一般の人は、「むし歯」と聞くと穴のあいた状態を思い浮かべることでしょうが、穴になるまでには過程があります。その過程で私たち歯科医療従事者がやるべきことがあります。初期のむし歯を発見できない・発見しても適切なアドバイスも出来ないようではいけないことを強く感じました。

二つ目は、この本のタイトルである“むし歯ってみがけばとまるんだヨ”という現実です。このことを患者さんに具体的に伝え実行していき、本の中に出てくる「花まるむし歯(初期むし歯を手入れして治した虫歯)」をどんどん増やしてお母さんや子どもの自信につなげていくことが私たちの役目であると思いました。

三つ目は、歯科健診のありかたについてです。私には二人の子どもがいます。歯科健診においては毎回違う歯科医師に診てもらい、むし歯の「ある」「なし」のみの健診に疑問を感じていました。著者のような歯科医師に出会い、同じ目で診てもらうことほど安心感のあるものはないと思います。むし歯があっても「むし歯ってみがけばとまるんだヨ」と言ってもらって次の健診で「むし歯の進行は止まっています。大丈夫です」と言ってもらえれば、自信を持って育児ができると思います。

これから親になる人、子どもをむし歯にさせたくない人に読んでもらいたいと思います。まさに、歯の育児書とよべる1冊です。当医院の待合室には勿論、さらには産婦人科の待合室、乳幼児健診の場にも置いていただきたいです。

書評:奥富恵美子/会員支援部会・禁煙支援部会

長く保健所で地域貢献しておられる会員の岡田弥生さんの新刊です。
「渾身の一冊です!」という一言とともに「大多数の歯科医には不愉快な内容と心配ですが…?」との手紙も一緒に届きました。長年、保健所という貴重な現場で多くの口の中をみてきた岡田さんだからこその、正直なおもいでしょう。どんなにがんばっても、まだまだの現状があります。今、何をするべきでしょうか…?

岡田さんとは、10数年前、日本医大の癒しの環境研究会で発会時に知り合い、たくさんの知己を得、教えて頂き、そして熊谷先生を杉並にお呼びになったときに、私たちに予防の扉をあけてくださいました。ターニングポイントでした。その後、岡田さんは大病なさいましたが、子供たちから高齢者まで、いつも、人の尊厳と歯の尊厳はイコールなのよ!と温い熱いまなざしで活動されています。立ち止まらない人です。

話は変わりますが、先日食事にいったホテルは混んでて、案の定待たされたのですが、そこへ子供連れの若夫婦が入ってきて、待つことになりました。若いパパが「あっ、あそこが座れる。◯◯ちゃん、あそこに座って待ちなさい」と言ったところ、年長さんくらいでしょうか? 小さいお嬢さんが喫煙コーナーのマークをみて「パパ、あそこはタバコを吸っている。座ったらダメ!」といったのでした。今は小さい頃から禁煙授業があります。

つい最近テレビで、石川烈さんが解説した歯周病の特集があり、サイトカイン、IL-1、TNF-αとテロップが出て、10年前基礎コースで伊藤中先生が細菌の名前をスラスラおっしゃったことを思い出しました。今はテレビで、一般の方にも伝えられます。そして人々の健康観が進む一方で、医療者側のにっちもさっちもいかない旧態依然の現状があります。医療者はどうあるべきか。今、何をすべきか…。日々の診療に誇りをもっているか…。岡田さんは、いつも問いかけます。

本の中で、医師と患者の信頼関係ははじめからあるものでなく、相互に創り出すもの。また、患者さんには本気になって伴走してくれる人を選ぶこと… と訴えています。「保健所勤務だと臨床してないんだろ?」なんていわないで、ぜひ、お手にとって読んでください。

まだまだ、やることはたくさんあります。できることもたくさんあります。近所の本屋さんに、この本を置いてくれるよう頼みましたら、快くオーケーでした。何かが動き始めています。
私達も足元を見つめながら、もっと発信しましょう。

『新 口腔内写真の撮り方』

書評:杉山精一/コアメンバー・八千代市開業

『新 口腔内写真の撮り方』
(著者;熊谷崇/熊谷ふじ子/鈴木昇一 出版;医歯薬出版 2007年9月 定価;9,240円(税込))



「規格性のある口腔内写真を撮る」ことが私たちの臨床で大変重要な意味をもっていることに意義を唱える人はいないでしょう。私が「歯科症例写真」と違った「規格性のある口腔内写真」を知ったのは今から12年前、東京医科歯科大学での熊谷崇さんのセミナーでした。いつも決まった倍率、同じ方向から同じ部位を、しかも歯科衛生士がミラーを使って一人で撮影するということを聞いたときは、正直いって「そんなこと私の医院では不可能!」と思いました。しかし次々とスライドに映されるすばらしい写真をみているうちに「何とか私の医院でも取り入れたい!」と思うようになりました。セミナー修了後に早速買ったのが「口腔内写真の撮り方 第1版」でした。この本をスタッフと読んで相互練習を行い、診療中には、撮影場所・倍率・方向を確認するためのコピーをいつもポケットに入れ、実際の撮影の時にはキャビネットにおいて確認しながら撮影をスタートしました。

あれから12年、プレゼンはスライドからパソコンに、カメラは銀塩フィルムからデジタルに変わりましたが、規格性のある口腔内写真は、普段の診療にはなくてはならないものになっています。
今回の本では、従来の銀塩フィルムカメラからデジタルカメラに変わったことについての解説がされ、撮影方法については第2版以上にミラーテクニック、口角鉤の使い方などそれぞれ失敗例もいれながら事細かに実際の写真入りで解説がなされています。また、所々に「コーヒーブレイク」として口腔内写真への理解を深めるためのミニ知識も書かれています。

これから規格性のある口腔内写真を始めようという医院はもちろん、新しく入ったスタッフへの教育用テキストに使うことによって新人教育の効率も高まると思いますので、多くの医院で活用される本として推薦いたします。

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