3月19日・20日 講演概要一覧-1
講師 講演概要

Dr. Oka

岡 賢二
本会運営委員
IHCF会員

1951年 神戸市に生まれる
1977年 大阪大学歯学部卒業
1982年 吹田市開業
1996年 『クリニカルカリオロジー』(医歯薬出版)出版
1998年 日本ヘルスケア歯科研究会の創設に参加・運営委員

所属学会
アメリカ歯周病学会
International Health Care Foundation

フッ化物に関する専門家・会員意識調査報告

本会のフッ化物調査小委員会(小委員長:岡 賢二)では、29歯科大学・歯学部の予防歯科・口腔衛生などすべての臨床系講座および病理、生化学、薬理学の講座の教授、助教授、講師の方々に対して、「専門家のフッ化物応用の認識に関する調査」を行いました。この調査は、各々調査対象者の所属・氏名を明記した調査用紙を料金受取人払いの返信用封筒とともに郵送する形式で行いました。有効送付先は827人、有効回答は2000年3月1日時点で256人(31.0%)となっています。以下その結果を報告します。併せて会員を対象とした調査結果を右欄に併記します。送付先は1,319人、回答は3月1日時点で572人(43.4%)です。

臨床疫学と病因論から見た歯周病の全体像

この20年あまり日本の開業歯科医には、歯周治療に関するさまざまな考え方や技術が数多く紹介され導入されてきた。そして今もどんどん新しい情報が提供されてきている。

しかしながら日本の国民の歯周病の罹患実態についての情報はきわめて乏しい。はたして国民の歯周病の罹患実態はどのようなものなのだろうか? 齲蝕のDMFTのような明確な指標を持たないがゆえに、この問いに答えることは難しい。さらに歯科医院で提供されている歯周治療は有効なのだろうか? 有効とすればどの程度有効なのだろうか? 私たちは歯肉の炎症の軽減、排膿の停止、動揺の減少、プロービング値の改善、X線写真上の骨の透過像の減少といった代用的なエンドポイント(surrogate endopoints)を用いて治療の有効性を判断してきたが、はたしてそれだけで十分なのだろうか? 今行われている歯周治療は究極的に歯の延命につながっているのだろうか? 治療の元になる診査や診断のあり方は満足すべき状況なのだろうか? 

また比較的若年で進行した歯周炎に罹患している人に遭遇することがあるが、歯周病ハイリスク者はどの程度存在しているのだろうか? これらハイリスクの人たちにはどのようなアプローチが必要なのだろうか?

こららの問いに答えることは容易ではないが、日本ヘルスケア歯科研究会が開発したデータベースソフト(ウィステリア)に入力された岡歯科の来院患者約3,000名のデータや症例をを通じて考えてみたい。

Dr. Kumagai

熊谷 崇
本会運営委員
IHCF会員

1942年 東京都に生まれる
1968年 日本大学歯学部卒業
1971年 横浜市開業
1980年 酒田市移転開業
1994年 『「歯科」本音の治療がわかる本』(法研)出版
1995年 IHCFの会員となる
1996年 『クリニカルカリオロジー』(医歯薬出版)出版
1997年 『20歳からの歯周病対策』(講談社)出版
1998年 日本ヘルスケア歯科研究会の創設に参加 運営委員
1999年 スウェーデン・マルメ大学より名誉博士号を授与される

カリオロジーを踏まえ、どのようにフッ化物を応用していくか

フッ化物がう蝕の予防や進行停止に大きな役割を果たしていることは、言うまでもない。しかしながら、どのようにフッ化物を使用するかについては、歯科医療者がどのような診療スタンスをとっているかによって、その考え方は大きく異なっているように感じている。たとえば、公衆衛生的な考え方で用いようとするのか、患者個人におけるリスクコントロールのために診療室や患者自身で用いるのかによって、大きな違いが存在する。

私たちが今考えなければならないのは、現在の日本において、どのようなフッ化物の使用が、「健康な歯を守り育てるため」に必要であるかということである。これは、日本という社会の環境、国民の考え方やニーズ、歯科医療のシステム、費用効果など、多くの要因と無縁ではない。

カリオロジーを踏まえ、リスクに応じた対応を診療室で行う場合は、フッ化物の使用をよりきめ細かく、効果的に行うことが可能である。

以前は様々な要因によってフッ化物の使用が遅れていたわが国も、最近はフッ化物の添加された歯磨剤の普及など、フッ化物をとりまく環境の整備が進められている。このような時代の変化に応じた効果的なフッ化物の使用について、診療室のデータをもとにした私の考えを述べたい。

臨床疫学的データと長期経過観察から歯周治療を再考する

歯周病についての基本的な治療や予防に対する考え方は、わが国においてすでに十分定着してきている。これまでに、多くの基礎的な研究報告や臨床報告がなされてきた。しかしながら、ともすると臨床家の目は、重度に進行した組織や機能を回復するための処置や方法に目を奪われがちである。けれども、「健康な歯を守り育てる歯科医療」を患者に提供するという一般臨床医に求められている臨床姿勢は、「歯周炎を発症させない、もしくは初期・中等度までの時点での速やかな対応とメインテナンス」であると感じている。

個々の歯科医院の診療システムを整備し、成人型歯周炎であれば20代・30代において早期発見・早期介入したうえでの継続的なメインテナンスによって、早期発現型歯周炎の疑いのある者については、家族単位での管理、DNAプローブ、PSTテストなどの検査を臨床に取り込むことで、早期から対応が可能になり、一般臨床医として十分にこの役割を果たすことができるのではないかと考えている。

このような考え方を、診療室の具体的なデータを示しながら、考察してゆきたい。

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