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【東京HCG】「切削介入に踏み切る診断基準」シンポジウム
 ―経過観察するべきか? 充填処置するべきか?―

■歯は本来寿命よりも保つもの
加久保晶子(つばき歯科クリニック勤務)

「切削介入に踏み切る診断基準」シンポジウム(東京ヘルスケアグループ主催)が9月2日川口フレンディアホールにて開催されました。患者さんの健康を守っていきたいと思い、当院でもMI(Minimal Intervention)に基づく診療、予防のシステムを作り実践しております。当院でも初期カリエスをどこまでコントロールできるか、どこまで進行したら削るのか判断に迷うケースが多くなりました。

そこで歯科医師、歯科衛生士ともに統一した診断基準を持ちたい、決めていきたいと思い参加させていただきました。セミナーでは、飯島洋一先生、河野正清先生、景山正登先生から学術、疫学、臨床面、さまざまな方向からお話があり、改めてカリオロジーの奥深さを知ることができました。

はじめに飯島先生からカリオロジーの基本的な事、最新のう蝕検出機器の特長や限界についてお話がありました。当院でもダイアグノデントを初期カリエスの診断に使用しているので、誤差が出てしまう原因がわかり使用方法の再検討が必要だと感じました。午後の後半のお話では再石灰化についてセルフケアにおける特定保健食品の積極的利用方法など具体的に教えていただきました。

河野先生には、ダイアグノデントによる診断をどう理解すればよいのか学術的に解説して頂きました。私達がダイアグノデントを使用して測定するたびに変化する値を理解するためにはその背景、環境が大きく影響することがわかりました。咬合面カリエスの診断にはダイアグノデントの値だけではなく「視診・触診・X線写真」を組み合わせることが大事だと感じ、ダイアグノデントを使用して疑問に思っていたことが解決できました。

景山先生からは基本となる隣接面カリエスの診断方法として咬翼法X線撮影のお話がありました。ここでもX線写真だけでもカリエスの切削基準は決められないことも教わりました。また、もっと深い疫学的な隣接面カリエス診断について解説がありました。ちょっと難しいお話でしたが、根拠に基づいた歯科医療を考えるためには必要な講義だったと思います。カリエスを削らずに予防管理するためにまずは術者の目を養うこと、X線写真の継続的な撮影が基本ですが、X線写真やダイアグノデントでも診断しづらいカリエスがあること、確実な診断装置がないこともわかりました。削るか、削らないかの診断基準は各医院ごとに決めていく必要があることを今回のシンポジウムを聞いて基準を作るための知識としていろいろ学びました。しかし、その基準があったとしても患者さんとコミュニケーションをとって、患者さんの情報、背景、協力度を知らなければ意味が無いことも改めて気づかされました。

「歯は本来寿命よりも保つもの」飯島先生の言葉で私が一番最初に印象に残った言葉です。

歯の寿命よりも長く保つためにはこれからも患者さんに情報提供できる体制づくりやカリエスに対する診断基準を持ち患者さん自身が自分の健康は自分で守ると思っていただけるように努めていきたいです。

◆ ◇ ◆

■いつ切削介入に踏み切るか…
川嶋 剛(国立市開業)

今回、私とスタッフ3人で参加させていただきました。今まで、「いつ切削介入に踏み切るか」、ということをテーマにしたものは非常に少なく思っていたので、スタッフともども大変興味を持っておりました。

午前中は、飯島さんよりカリオロジー、咬合面う蝕についての学術的な視点からの説明。有病率を把握することの重要性、再石灰化治療についての説明。河野さんよりダイアグノデントの値とその認識についての説明。午後に入って、景山さんより隣接面う蝕についての診断方法や切削介入に踏み切る場合の基準など。午後の後半は、飯島さんより再石灰化をするにあたっての方法など。

一日をまとめると、

(1)初期のカリエスに対しては、切削介入する前に再石灰化処置を考えるべきである。
(2)切削介入する時期の基準は、個々の持っているリスク、有病率、社会的状況によって変化する。
(3)ダイアグノデントは、診断を下すものではなく、診断の参考にするものである。
(4)う蝕には活動性があり、X線写真はう窩はわかっても活動性はわからない。問題はう蝕活動性であり、病変が静止状態ならば、予防処置も外科的処置も必要とされない。
(5)う蝕の進行はゆっくりである。
(6)探針はう蝕診断器具として不可欠なものであり、圧をかけずにやさしく扱うことでう蝕病変の性状について有効な情報を得る。
(7)有病率とX線診断の関係は、有病率の低い集団のX線診査は過大評価する傾向があり、また有病率が高い集団では過小評価する傾向がある。
(8)歯を修復するという決断は、修復物が数回やり直され、ついには歯の硬組織に重大な破壊をもたらし、そして最後には抜歯になる可能性があり、それが保存修復のサイクルの始まりである。従ってできるだけ切削介入は延期すべきである。

特に(8)の言葉は、改めて肝に銘じなくてはならないと思いました。
今回のシンポジウムは、大変有用な情報が多数あり、大変有意義な一日だったと思います。

ただ、学問的な内容が主であったため、スタッフにはやや難解な部分もあり、ピンと来ない部分があったようです。今後、臨床に沿った形でカリオロジーをどう生かすかなどの企画があるとよりよい気がします。

最後に、主催してくださった皆さん、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

◆ ◇ ◆

■自分は、ただ単に形だけの予防歯科を作ってきたのではないか?」
米山吉洋(千葉市開業)

9月2日、川口フレンディアで開催された東京ヘルスケアグループ主催のシンポジウムに参加した。この会場は、とてもきれいで交通の便もよく、使用料も比較的安価のため穴場といえるところである。

登壇者は、長崎大学の飯島洋一先生、中野区開業の景山正登さん、東京ヘルスケアグループ代表の河野正清さんの3名。飯島先生は、切削前の診断としてダイアグノデントの利点、欠点、及び感度、特異度、有病率の臨床的意義、再石灰化治療のポイント、根面う蝕へのアプローチ、フッ素の特徴、研究段階を含めた各種う蝕検出機器の特徴やその診断基準、う蝕活動性、非活動性の見極めのポイント、特定保険用食品の積極的利用などを話された。
変わって河野さんは臨床上のダイアグノデント検査の疑問を参加者に投げかけた。さらに咬合面う蝕の切削介入に踏み切る診断基準として、ある一瞬において、う蝕の可能性のある歯を正確に診断するのは、極めて困難とし、長い時間軸のなかで、長期間にわたりメインテナンス出来るのであれば、確信をもてる確定的診断が行える時期まで待っていることができるとした。
景山さんは、自身の臨床を通じて、診断の基本である視診と規格化されたX線写真撮影の必要性を話し、特にバイトウイングは隣接面カリエスの診断として有効なものと説明。しかしながら、検査はすべて事実を表しているわけではないとし、X線写真におけるカットオフポイントや有病率について説明された。さらに、う蝕検出の基準は、バイトウイングを用いることによって明確化されることを強調された。ここでう蝕リスクにも触れて、切削介入前の診断を重要視するのであればリスク検査の必要性も充分あるとされた。さらに診療所ごとの切削基準の構築について触れ、ドクター、歯科衛生士の共通認識の必要性を話された。

参加者からの事前質問にも飯島先生を初めとして登壇者からわかりやすい回答をいただいた。質問を紹介するとシーラントについて、チャージの問題について、オブザーベーションの注意点、乳歯う蝕についてなど。

告白すれば、この原稿を渡辺 勝さんより依頼され、資料を改めて読み進めるうちに自分自身の臨床のなかの診断基準のあいまいさにとても恥ずかしさを覚えた。自分はただ単に形だけの予防歯科を作ってきたのではないか? 予防管理型の診療所作りを構築しながらも、治療自体は、ややもすればオーバートリートメントを行っていたのではないだろうか? とはいえ、学問だけで歯科医院経営が成り立てば、こんなに苦しむこともないだろう。今後は、自分の医院内での切削介入の診断基準を歯科衛生士とともに構築していこうと思う。
今回のシンポジウムは、東京ヘルスケアグループの渡辺 勝さんが企画、担当をしていただいたのだが、結果的に参加者は、身内がほとんどといった状態に渡辺さんも肩を落とされたようだ。しかし、少なくとも参加された方にとって自分の医院が、真の予防管理型歯科医院となりうるのか自問自答する機会を与えてくれたことに意義を感じられたのではないだろうか。

この企画、運営をしていただいた渡辺 勝さん、登壇者の方々には、大変なご苦労であったと察する。参加者を代表して、ここに感謝の意を述べさせていただきたい。

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