会誌

会誌アブストラクト

vol.1 no.1/index

お詫びと訂正

  • P.18  図のグラフ中指示「喫煙」と「非喫煙」の指し示す帯が反対になっております。黒帯が喫煙、水色が非喫煙者です。お詫びして訂正いたします。
  • P.24 文末が欠落しております。
    お詫びとともに、赤文字の部分を追加訂正いたします。
    もちろん医師、歯科医師を始めとするすべての医療スタッフは,よりよい医療の実践の一環として、公私ともにタバコと無縁の生活をするべきであろうと思われる。何故ならば,自身ができないことを患者に指導できるはずがなく,患者に対して正しい健康観をアピールすることができないと考えられるからだ。

vol.1 no.1/アブストラクト

初診患者のカリエスリスク・プロフィール/熊谷 崇ほか

チェアサイドで簡便にカリエスリスクを診査できる唾液およびう蝕関連細菌の検査法が、わが国に紹介されて5年近くが経過した。そこで日吉歯科診療所(酒田市)来院患者のうち199X年X月から199X年X月までに来院し検査データを入力した4110人の患者のうち、集計可能なカリエスリスクにかかわる検査値を集計・報告する。検査対象には、初診患者ばかりでなくメインテナンス中の患者も含まれ、また地域性や患者層の偏りなどもあるため、ここから短絡的にわが国全体の受診患者の平均像を推測することはできないが、診療室で同様な検査をした場合の参照データとなろう。これらの検査をリスク判定の資料として用いる場合、あるいは診療機関の自己評価のために用いる場合、何らかの基準になる多数例の検査結果を参照することは有意義である。とくに医療制度の違い、処置歯率の違い、フッ化物の利用程度、砂糖摂取量など、日本の国民の口腔内は先進工業国のなかで特異な環境にあり、そのカリエスリスク・プロフィールを明らかにする意義は大きい。

唾液中のmutans streptococciレベルの検査(Dentocult SM)では、男性で39%、女性で46%の人が歯面の80%以上にmutans streptococciが定着していることを示すレベルであった。唾液の緩衝能の検査(Dentobuff Strip)で、とくに低い値を示した人は、男性の25%、女性では32%に上った。この他、唾液分泌速度、唾液中のlactobacilliレベル、飲食回数、分泌抑制副作用薬剤の服用、フッ化物使用状況、プラークコントロールの状態などについて検査し、集計したので、その結果を報告する。

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初診患者の歯周病学的プロフィールと喫煙/熊谷 崇ほか

初診患者およびメインテナンス中の患者について、その喫煙習慣を調査した。調査対象としたのは、1980年10月から1998年10月までに日吉歯科診療所(酒田市)を初めて受診した10歳から84歳までの1616人およびメインテナンスで来院した患者973人である。喫煙習慣については、とくに習慣性の喫煙蓄積量が健康に大きな関わりをもつとの報告*があるため、〈1日あたり喫煙本数×喫煙年数〉により蓄積本数を求め、それを4段階にクラス分けした。

またX線的に観察した歯周支持骨の吸収の程度により、各歯について歯周病の進行度を4段階にクラス分けし、その患者の全歯の平均をもって当該患者の歯周病進行度とした。その他、臨床的プロービング値、喪失歯数、メインテナンス管理の効果について、喫煙習慣との関わりを検討した。その結果、喫煙者と非喫煙者とでは、とくに30歳以上の患者で歯周病の重症度に明確な差が認められた。この調査では男性の喫煙者率が非常に高く、とくに男性において歯周病の増悪因子となっていることが明らかになった。

喫煙が歯周病の増悪因子になることは、近年数多くの研究で明らかにされているが、臨床的なリスク診断あるいは歯周病の予防や治療の一環として歯科診療所において喫煙の問題に取り組むことは、まだ普及しているとは言えない。通院患者の喫煙習慣の実態を知り、歯周病のリスク診断にその情報を用い、歯周維持療法(Supportive therapy)における喫煙習慣改善の臨床的効果を明らかにすることは、歯科診療所における歯周病の予防治療において喫緊の課題である。

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患者データの管理---その意義と方法/熊谷 崇

患者データの管理は、患者のために重要であるばかりでなく、私たち診療機関の客観評価のためにも重要な意義をもつ。しかし、情報が多くなればなるほど効率的な管理は困難になるため、情報管理の方法は常に費用効果の側面から検討しなければならない。筆者らは、診療記録や口腔内規格写真などの記録とは別に、臨床疫学データを得るためのデータ管理を提案してきた。本誌には、その一端を紹介しているが、それに先だって筆者らがルーチンワークとしている患者データ管理の方法と意義について述べる。

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地域に根差した歯科医療を模索する/浪越建男

人口7,500人、歯科医療機関1か所の町に歯科医院を開設したが、患者の口腔内の状態は想像以上に劣悪であった。幼稚園、小学校の校医として町内のほとんどすべての子どもに接する機会が与えられたため、

  1. 健診時の探針不使用
  2. 健診時の「疑わしき歯は健康」の判定
  3. 初期齲蝕に対するフッ素応用指導
  4. 0.2%NaF週1回洗口など

順次可能な施策を学校保健活動において採用した。この結果、小学校の12歳児DMFTは、1994年の3.0から98年には1.2に低下、同年齢の永久歯のカリエスフリー率は31.4%から50.6%に改善した。そして、地域の歯科保健活動を先行させたことが、診療室の予防的診療体制の整備に大きく寄与した。

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村木沢小学校における学校歯科保健への取り組み/斎藤直之

学校歯科医として、その役割、健康診断の目的、学校歯科医の目標、CO(Questionable Caries for Observation)の趣旨の徹底を改めて整理した。また健診において探針の使用をやめ、口腔内写真を撮影し、それを家族への情報提供や経過観察に活用した。その結果、12歳時(第6学年)のDMFTは、1993年の4.3から98年に1.6に改善した。

今後、家庭−学校−ホームドクターの連携をより重視し、健康を守り育てる社会環境を整備したい。

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矯正治療中の齲蝕予防システム─その変遷と成績/竹下 哲

矯正期間に新たな齲蝕を発展させないために、シュガーコントロールとTBIを徹底した。DMFTを評価したところ、矯正治療中の2年間にDMFTは2.8増加した。これは同年齢の一般的集団と同程度であった。その後、カリオロジーの考え方に接し、リスク判定を行い、それに基づいてハイリスク部位にプロフェッショナルケアを集中し、必要な部位にシーラントおよびフッ素塗布を行った。38人のマルチブラケット装置による矯正治療患者を調査したところ、12歳から14歳の矯正治療期間の2年間に新たに増加したDMFTは0.1であった。

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私の学校歯科保健活動/佐々木正晃

同じ小学校の校医となって7年目になるが、初めの3年とその後は、疾患に対する理解、健康診断の方法、診断基準、対処法などすべてが大きく変わった。このことによってDMFTも著明に変化した。初めの3年は、公衆衛生活動は建前の活動であり、診療現場では本音の活動、学校歯科検診では基準どおりに正確を期すことだけを考えていた。これは、8020という建前と処置優先の保険診療の本音という、日本の現状につながっている。学校歯科保健活動は、歯科医療を中心に置いて人々を見ていた私に、様々の異なる考えや価値観を教えてくれる格好の社会勉強の場となり、「健康を守り育て、健康観を高めていく」という一貫した姿勢の大切さを教えてくれた。

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予防にシフトした歯科診療所経営の現状/太田貴志ほか

慢性疾患の医療について、対症療法に偏った従来の医療のあり方が批判されている。しかし医療のいわば下部構造にあたる病院・診療所の経営は、従来の伝統的な収支構造から一朝一夕に脱皮し得るものではない。診療システムの改革は、経営的な足かせをはめられているように見える。そこで診療所のシステムを修復・補綴から予防重視へとシフトした本会会員の診療所10施設に過去14年間の経営データを提出していただき、その可能性と問題点を分析した。保険の件数すなわち患者数の推移を概括すると、一貫して増加している診療所と減少または横這いの診療所がある。この二つの対照的なグループについて、その違いが生じる理由を考察した。その結果、診療所のキャパシティの変更が、予防中心の診療所経営においてはひとつの大きな条件になることが浮き彫りになった。

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