会誌

会誌アブストラクト

vol.5 no.1/index

vol.5 no.1/アブストラクト

バイオフィルムの臨床生物学 花田信弘

本稿は、感染症としてのdental cariesの定義を明確にし、high risk者に対する二次予防の考え方について述べる。mutans streptococciの臨床生物学的観点から見て、集団を対象にした一次予防の手法を診療所に導入しても十分な結果が得られるとは考えられない。つまり、mutans streptococciの形成するbiofilmの除去には専門的な技術を必要とする。本稿では、二次予防が軽視されてきたわが国の公衆衛生学的背景、dental cariesの人類史的な概観、dental cariesにおける感染、口腔内常在菌(S. mitisS. oralisS. salivarius)の考え方とプレバイオティクス、筆者らが確立したmutans streptococciの除菌(3DS)の原理とその結果について紹介する。

ページのトップへ戻る

加齢に伴う口腔内の変化について―来院患者の歯牙情報分析からの考察 小口道生・熊谷 崇

歯科疾患実態調査報告(1999年)の国民の年齢階級別一人平均DMF歯数(DMFT指数)および日吉歯科診療所を受診した10歳以上の初診患者(4,396名)のDMF歯数年齢別推移から、次のような加齢に伴う歯の喪失の仮説が浮かぶ。すなわち多くの国民が、10代から20代にかけて修復治療を受け,その後再治療を繰り返して抜歯に至るというストーリーである。そこで1歯ごとに修復の程度(CRレジンか、インレーか、クラウンか)や歯髄の生活失活の別、抜歯の理由について調査した。調査対象者・対象歯は、2000年1月から2002年12月の36カ月間に日吉歯科診療所に初診で来院した者のうち、30、40、50、60歳のすべての患者88人(男28人、女60人)の智歯を除く2,446本(前歯1,050本、臼歯1,396本)である。また考察のため2000年以前の同年齢の初診患者348人についても調査した。その結果、壮年期まで健全に保たれた歯はその後も治療の必要が生じにくいこと、加齢に伴って有髄処置歯が減少し、無髄処置歯は50歳まで増えて60歳で減少すること、初発に比較して再治療の頻度が非常に高いこと、重度の骨欠損(歯根1/2以上の骨喪失)を伴う歯は非常に少ない(50歳で1.9%)こと。50歳までの抜歯理由はほとんどcariesに由来するものだった。これにより仮説の傍証が得られた。今後、受診患者の歯牙単位の情報を蓄積したprospective studyによって、若年者の修復治療の生涯における問題点を明らかにしたい。

ページのトップへ戻る

歯肉縁下バイオフィルムコントロールの効果に関する科学的根拠 三辺正人

「非外科的歯周治療の臨床有用性;SRPの科学的根拠に基づいた展望」をKey Reviewとして要訳し、重要と思われる内容について「補遺」による補足説明をした。「その他」には、Key Review以外のSRPに関する総説論文要旨の一部と、他の関連する参考図書を紹介した。また、それ以外のSRPを理解するために必要な文献は、参考文献(No)として、一部は、構造化抄録(Structured Abstract;SA)として引用できるようにした。「図」は、文献より改変引用あるいは、文献をまとめて作成したもので、本総説の理解の補助、知識の整理、スタッフや患者への説明に利用できるようにした。「Q&A」は、得られた知識を臨床の場に生かすために想定して作成された(第6回秋季学術講演会「バイオフィルム感染症を理解する」午後の部、歯肉縁下のバイオフィルムコントロール―臨床的疑問に答える―講演内容)。これら一連の解説(Key Review→補遺→その他→参考文献(SA)→図→Q & A)によって、最近の歯肉縁下の非外科的歯周治療の科学的根拠に基づいた概念を把握することができる。今後臨床、研究の進展や社会のニーズの変化により内容の補足、修正が必要である。

ページのトップへ戻る