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vol.9 no.1/index

vol.9 no.1/アブストラクト

講演聴講記録/月星光博氏講演
患者の生涯の健康を考えるミニマルインターベンション

このレポートは、2007年11月のヘルスケア・ミーティングにおけ月星光博氏の講演記録である。月星光博氏の講演は、ミニマルインターベンションの概念と考え方について考察するところから始まり、外傷歯の診断における電気的歯髄診断(Electric pulp test)の重要性を強調し、いったん生活反応がなくなり変色が始まった歯の歯髄が再び生き返るtransient apical breakdownや露髄を伴う歯冠破折の症例を提示しながら、歯髄の旺盛な治癒力について注意を促した。また、歯根破折の4つの治癒経過(1 healing with calcified tissue 2 interposition of connective tissue 3 interposition of bone and connective tissue 4 interposition of granulation tissue)について、各々典型的症例を提示して紹介し、亜脱臼の歯の治癒、外傷性脱離歯の再植、脱離した乳歯の再植について主に診断に焦点をあてて解説した。そして、根尖病変が歯髄壊死の指標にはならないこと、また外傷に由来する全部性歯髄炎は、年齢が若ければしばしば歯髄の保存が可能であることを多数の症例をもって示した。最後に、歯根未完成智歯の自家歯牙移植の症例を示し、ミニマルインターベンションの頂点にある治療方法であると位置付けた。

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大西歯科における子供の予防的定期管理と重症う蝕予防との関連 藤木省三

う蝕の重症化を防ぐ上での予防的定期管理の有効性を評価するため、予防的定期管理に応じたグループと応じなかったグループの2群に分け、重症化(深部う蝕および抜髄処置)について評価した。検討の対象は、1990年1月1日から6年間の内に6歳以下で初めて受診した患者で、2005年1月1日以降に来院した者とした。該当する患者は48名で、 2003年から2007年の5年間に、メインテナンスに5回以上来院した患者を定期管理患者としてグループA(17名、現在平均年齢17.9歳)、5回未満の患者をグループB(31名、現在平均年齢19.8歳)とした。この2群では、グループAの半数以上の子供がカリエスフリーであるのに対して、グループBの半数以上はDMFT3以上、重症のう蝕は、グループAでは、外傷による抜髄処置1例と深部う蝕1例であったのに対して、グループBでは、深部う蝕が9例、抜髄処置が7例あった。う蝕の重症化を防ぐことができた原因を考えると、定期的に来院することで1.各年齢におけるリスク要因をあらかじめ患者に伝えることができる 2.乳歯から永久歯への交換期に問題となる、永久歯の萌出に伴う局所的なリスクに対処できる 3.定期的なエックス線撮影によって重症化の徴候を早めに検出できる、ことなどを挙げることができる。定期管理を継続できる患者とできない患者では、本人や保護者の意識の違いが大きいと思われるが、初診時に、より多くの患者に定期受診行動を起こさせるような動機づけを与えられれば、う蝕の重症化を確実に防ぐことができるであろう。

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Doプロジェクト調査報告 調査1
歯科診療所における初診患者の実態調査(2007年度) 藤木省三・伊藤中

私たちの研究会では、すべての患者の臨床データを記録し、蓄積することを推奨している。そこで、協力診療所を募って初診患者の臨床データを毎年集計する調査事業を昨年から始めている。2年度にあたる今年は、会員27診療所が参加し、2006年1月1日から2006年12月31日までに初めて受診した患者について、基本的な臨床データを集計した。条件に該当した患者は、10,555名で、10~70歳以上の年齢階層別DMFT、5~20歳まで年齢別DMFT、20歳以上年齢階層別(5歳区分)残存歯数、年齢階層別歯周病進行度(非喫 煙者、喫煙経験者)などについて集計した。その結果、12歳児のDMFTは1.68、20歳のDMFTは7.76であった。また喫煙経験と歯周病進行度との相関については、喫煙本数が多くなるほど中等度以上の歯周炎に罹患している人が多いことが明らかになった。国民的規模での歯科疾患の実態を把握するためには、厚生労働省による歯科疾患実態調査が貴重な資料である。この調査は、国民生活基礎調査を基に層化無作為抽出した世帯の調査であり、野外調査として信頼性が高いとされる。しかしながら、調査毎に被調査者数が減少し、1957年の調査で30,000人を超えていた被調査者数は2005年調査では、4,606名(受検診率37.2%)にまで減少している。とくに若年者の減少は著しく、20歳から24歳の男性を例にとるとわずかに合計47人の被調査者しかおらず、調査の信頼性への影響が懸念される。私たちの調査は、受診患者の調査(hospital statistics)であって国民を代表する調査ではないが、臨床の場での疫学データを蓄積する意義はますます高くなっている。

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小学校における喫煙防止教室を実施して 杉山精一

喫煙者の多くは中学生ではじめて喫煙を経験している。そこで学校教育のなかでタバコの健康被害について正しい知識を繰り返し教育する必要がある。"タバコ問題を考える会千葉"(TMKC、代表 2006年中久木一乗、2007年大谷美津子)は千葉県健康福祉部健康づくり支援課から喫煙防止出前教室事業を委託され、地元の小学校で喫煙防止教室を行った。私が実施した喫煙防止教室は、8校で対象は758名の児童であった。高学年には写真と動画を多用して喫煙の弊害を解説し、また授業前後にアンケート調査を行い、生徒の意識の変化を評価した。低学年では紙芝居をした上で、その内容を解説しながら振り返った。高学年のアンケート調査によると、家庭内に喫煙者がいる児童は58%で、過半数の児童の身近なところにタバコがある状況がわかった。授業前に「私はおとなになったらタバコを吸うと思う」という質問に「わからない」「はい」と回答した児童は25%であった。授業後「吸う」「わからない」の合計は7%に低下した。

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