カリエスリスク診断caries risk assessmentから得られる情報は非常に重要なものであるが、それぞれのrisk facterがどの程度の重みを持つのか、あるいは個々の患者の危険度について、歯科診療の現場においてat chair side予測する方法はまだできていない。 初診に近いカリエスリスク診断は、リスク改善の指標の意味合いが強いと考えられるが、maintenance phaseにおける情報には「う蝕病変発生の予知因子」としての役割が求められる。 メインテナンス中の患者のcavityの発生を予測することはできないか、と考え診療診療データを分析した。
今回の分析の対象は、検査時5〜12歳の患者のうち、検査後少なくとも3年のメインテナンス期間を有する者とした。対象者は63名で、そのうち9名に検査後3年以内にDMFTの増加が認められた。各検査値の疾患予測能力について、検査前確率(有病率)とpositive and negative predictive valueを比較することによって評価した。結果として、positive predictive valueがpretest probabilityより高くなり、あるパラメーターの値が陰性のときにより低くなる(negative predictive valueが高くなる)ようなパラメーターは、疾患のリスク予測に有効である。また、単一で疾患の予測に有効であったパラメーターを組み合わせることにより予測能力は向上した。
最終メインテナンス年齢19歳以下・5年以上来院者のう蝕予防管理結果について定期的予防管理がどれくらい疾患コントロールに効果があるか、自医院の結果を知るには実際に20年近い年数を経なければならない。そこで、最終メインテナンス年齢が19歳以下で5年以上来院された者を3つの年代に分けて、それぞれの年代でのDMFの変化を出し、その結果から、当院での定期来院者について18歳までのう蝕予防効果を推測してみた。最終メインテナンス年齢が11歳から19歳までで、メインテナンス期間が5年以上の該当者89人について、メインテナンス時の年齢で11〜13歳、14〜16歳、17〜19歳の3つに区分し、メインテナンスに応じた回数によって2群に区分し、検討した。その結果、当院では、患者が6歳時から定期的に来院した場合、定期予防管理によって20歳までに平均2程度のDMF増加にとどめることが可能と推測された。
歯周病は、他の感染症と異なり、多くの場合細菌が組織の外部に留まるというユニークな特徴をもっている。すなわちからだの外部の細菌が引き金となって生じる生体の抵抗性や反応性によって病気が発現する。歯肉のサイトカインの量を遺伝子レベル(mRNA量)で評価した私たちの研究でも、歯肉の臨床所見が増えるほど、骨吸収に作用するサイトカイン(IL-1β、IL-6、TNFα)が局所で高レベルに維持されていることが明らかになった。歯周病を理解するには、細菌とともに、俗に言う「体質」の理解が必要である。個人間における1遺伝子暗号(1塩基)の違い(人口の1%以上の頻度のもの)を多型(ポリモルフィズム)と呼ぶが、この遺伝子暗号の違いが「体質」を規定している。Kornmanらの研究では、IL-1の遺伝子型と歯周病の重症度にかかわりがあることが明らかになった。白人ではIL-1高産生型の比率は約30%、日本人では約7〜10%がIL-1高産生型である。このように歯周病のリスクにはコントロール可能なリスクとコントロール不可能なリスクがあるが、個人のリスクを客観的に評価することによって、そのリスクに応じた予防プログラムを提供することが重要になってくる。
このような歯周病の理解を前提に、AAPの歯周病の分類の意義とそれに応じた歯周病の診断と治療の流れについて概説する。
歯肉炎は人口のほとんどに存在する。歯周炎は成人に比較的よく見られる疾病である。しかし、重篤な慢性歯周炎は、人口の一部が罹患しているだけで有病率はそれほど高くない。米国では、30歳以上の成人で約3%、65歳以上で20%以上である。世界の他の地域でも同様の傾向が見られ、有病率は高くない。若年層の慢性歯周炎の有病率はさらに低い。比較的高い地域はアジア、南米、アフリカである。侵襲性歯周炎はさらにまれな疾患であり、人種的・民族的集積が見られる。 日本の歯科疾患実態調査(1999年)を用いて、米国およびブラジルと比較してみた。 日本の歯周病有病者の割合を年齢別に見ると、歯周病の徴候が見られる患者の割合が加齢とともに増加し、40歳では全人口の85%近くが歯周病の徴候をもっている。重篤な歯周炎の日米比較を見ると、55歳あるいはそれ以上の年齢層になると差が際立っている。
免疫系と細菌との関係に影響を与える因子の関係は非常に複雑であり、その中には強い影響力を持つ因子がいくつか存在する。リスク因子の評価は、それが疾患の予防に役立ち、臨床歯科医は何がリスク因子であるかを知ることによって疾患をコントロールすることができる。
若年者では、まず歯肉炎に注目しなければならないが、歯肉炎にはプラークによって引き起こされるものとそうでないものがある。小児の歯周炎は局所的因子および歯肉の炎症の影響が大きい。若年者の慢性歯周炎治療にあたっては、まず局所的因子を除去する必要がある。そのためにはスケーリング・ルートプレーニングを行い、修復物のオーバーハングなどを除去しなければならない。
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